2023年11月26日

週末の公園

週末の公園

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 ■ここ

 どっかに行こうと私が言う
 どこ行こうかとあなたが言う
 ここもいいなと私が言う
 ここでもいいねとあなたが言う
 言ってるうちに日が暮れて
 ここがどこかになっていく

 (谷川俊太郎 『女に』より) 
 

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 急に気温が下がったので初めてダウンジャケットを着て散歩に出た。

 主治医から許可が出たので昨日からリハビリセンターで本格的にリハビリを始めた。結構きついメニューで最初は仰向けに寝て片足を上げたまま腰を浮かす運動なのだけれど、二週間ちょっとの入院で筋肉が落ちているので、1セット目からみごとに太腿の裏側がつった。

 それからふくらはぎの筋肉に電気をかけたまま、スクワットとつま先立ち。それぞれ20回を3セットづつ、と理学療法士の先生はさりげなく言うけど…。でもまぁ、この先生とは付き合いが長いのでぼくの限界をしっているからやるしかない。最後はフィットネスバイクを25分やってあがり。気を付けて帰ってくださいね、の声をあとに病院をでる。

 週末の朝の公園は人々の営みが見えてぼくの好きな時間だ。はやく公園の丘の上まで行けるようになると良いのだけれど。最近の週末の公園で目に付くのはファミリーが多いことだ。テントを持ってきて一日ゆっくり過ごす人も増えている感じがする。コロナ禍は社会の色々なものを痛めつけ破壊していったけれど、一つだけ良いことは家族というものの存在に目が向いたことかもしれない。

 旅行や人ごみのテーマパークなどには行けないので近場の公園に行って家族で過ごす。そこにはメリーゴーラウンドもジェットコースターもシンデレラ城もないけれど、そういう仕掛けで遊ばせてもらうのではなく、自分たちで遊ぶという楽しみと喜びを教えてくれたのかもしれない。それがライフスタイルになりつつある人たちが週末の公園には増えてきている。
 

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 *今はステッキをもっているので写真はスマホだけだけど、フリーに歩けるようになったらまたお散歩カメラを持って歩きたいです。
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2023年11月21日

秋の日の…

秋の日の…
 
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 ■ 秋の歌 

 秋の日の ヴィオロンの
 ためいきの 身にしみて
 ひたぶるに うら悲し。

 鐘のおとに 胸ふたぎ
 色かへて 涙ぐむ
 過ぎし日の おもひでや。

 げにわれは うらぶれて
 ここかしこ さだめなく
 とび散らふ 落葉かな。
 
   ヴェルレーヌ(上田敏訳)


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 上田敏の訳詞はテンポがいいので好きなのだけれど、このヴェルレーヌの詩には特別な思いがある。というのは1968年に公開された映画「史上最大の作戦 (The Longest Day)」のワンシーンにこの詩が使われていたからだ。

 この詩は第二次大戦中BBCのフランス語放送がフランスのレジスタンスに対する暗号として流していた。つまりこの詩の冒頭が流されれば近いうちに連合軍の大規模な上陸作戦が行われ、そしてそれに続くフレーズが流されれば作戦は48時間以内に決行されるという意味であった。

 映画のシーンではフランスのレジスタンスのメンバーが真剣な面持ちで一台のラジオを囲んで聞き入っている。そこにこのヴェルレーヌの詩の朗読が流され、それを聞いたレジスタンスの面々が歓喜する。

 この映画の名シーンと言ってよいと思うのだけれど、考えてみれば時代は変わってラジオがVPNを経由したSNSになってはいるが、今でも色々な地域で同じように抑圧された人々が、パソコンやスマホを食い入るように見つめ何かの合図を待っているのかもしれないのだ。息をひそめて…。
 

 先週末から公園散歩を再開した。まだ距離は全然歩けないけれど痛みがないのが助かる。手術の傷にフィルムがまだ貼ってあるので風呂はまだ、シャワーを浴びている。昔頸椎を手術した時はホッチキスみたいなもので縫合してあったのだけれど今はテープらしい。

 今日は風が冷たいので身体が冷える。しばらく来ないうちに公園のピラカンサは赤くなり、落羽松も褐色の葉を落とし始めている。かと思えば変な陽気に面食らったのか桜が咲いている木もある。外の空気を吸うとそれだけで元気をもらえる気がする。
 

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 *ずいぶん昔になりますが、この映画「史上最大の作戦」で陸軍大将を演じていたドイツの俳優クルト・ユルゲンスと一度だけ話をしたことがあります。映画「眼下の敵」の名演でも評価されていた彼は最も軍服の似合う役者と言われていました。

 1972年の冬にバンコックから台北経由で羽田にゆく同じ飛行機に乗り合わせてトランジットで台北に降りたときに待ち時間に少し話すことができました。女性を同伴しておりこれから札幌オリンピックを観に行くのだと言っていました。気さくな反面、威厳に満ちた感じでした。
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2023年11月16日

旅愁 Portugal

旅愁 Portugal
 
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 考えてみたらもう長いこと旅をしていない。ありふれた日常にどっぷりとつかり込むのも嫌いな方ではないけれど、それでもたまには旅に出て新たな日常に触れてみたい衝動みたいなものが起きてくる。

 ぼくの旅は何かを観て歩くというよりは違う場所、違う環境の日常に身を置いてみたいという欲求を満たすためのものみたいで、従って旅先でも行動は普段とあまり変わらない。毎年行っていた沖縄でも一日は散歩と読書と昼寝と居酒屋というルーティンみたいな生活で、新たな人との出会いということをのぞけばそこに目新しいものはない。

 海外旅行にも望むものは同じようなもので、ぼくの理想はどこか遠い異国に行きつけの飲み屋がある、みたいな気持ちなのだ。もちろん海外は同じところにそう何度も行けるわけではないのでそれはあくまで理想なのだけれども…。

 そんな事の何が楽しいんだと言われると少々困るのだけれど、あえて言えばその土地やその国の旅情というかその時にしか感じえない時の流れみたいなものが魅力なのかもしれない。旅情と似た言葉で旅愁という言葉があるけど、それはいくぶん旅の孤独感の方に軸足があるような気がする。親しい仲間内でわいわい言いながら旅するのも悪くはないけど、そこに旅愁はないような…。

 ぼくの場合、旅情や旅愁の中には、どこか懐かしさやノスタルジーが含まれていて旅先でそう感じられる瞬間にあうと何とも言えない人生の充実感を感じる。ポルトガルはそんな時の流れに多く触れられる国だったような気がする。

 小さな村の早朝オープン前の野外カフェに流れる優しい時の流れ、コインブラ大学の講堂での学位授与式での誇らしげで緊張した空気、ポルト港の鈍色の空をゆっくりと滑ってゆく鳥影。奇跡の丘ファティマの大聖堂に差し込む白い光。そういったもの全てが時の流れの愛しさを告げているように感じた。また、そういう時の流れに出合えればいいのだけれど…。
 

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 *ポルトガルで撮った写真を3分強のスライドショーにまとめました。バックに流れるファドの歌はMarizaというポルトガルの国民的ファド歌手で、オビドス村の小さなCD屋さんで教えもらったアルバムからとりました。よろしければYouTubeで限定公開していますのでご覧いただければ嬉しいです。↓
 
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and also...
もの想う海
 

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2023年11月11日

斬られました…

斬られました…
 
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 背中をばっさり斬られました。二週間ほど入院して脊柱管狭窄症の手術を受けた。基本は長引くコロナ自粛で、外出もなしジムにも行けず運動量も減っていたということがあるのだろうと思うけれど、今年の三月くらいから脚の痛みと下肢に力が入らない等で歩くのもままならない状態が続いていた。

 翌月から以前通っていたリハビリ病院でのリハビリを続けていたのだけれど、大幅に改善するということがないまま夏も終わろうとしていた。担当の理学療法士の先生の勧めで5年ぶりにMRIを撮ってみると以前はなかった腰椎部にかなり狭窄している部分があることが見つかった。

 その狭窄が神経を圧迫して色々なところに影響が出ているらしい。神経のダメージがあまり長期間続くと手術してその圧迫を取り除いてももう元通りには戻らないことが多いということで、今のうち手術を受ける決断をした。実は二十数年前に頸椎症の手術で背中には首から40センチくらいの長さの傷跡があり、今回の手術でその下の腰椎部分にまた20センチくらいの新しい傷が加わった。

 スマホで背中の写真を撮ってもらって見たら、背骨に沿って上下に切り取り線のような傷跡があって、何だか下手な辻斬りに後ろから斬りつけられたみたいで奇妙な姿である。まぁ、本人には見えないのだから良しとしよう。以前ジムのプールの中でウォーキングをしているとき、後ろから来たマダムが「あら~、首から背中すごいわねぇ、どうしたの?」と声をかけられたので、とっさに「あ、これ着ぐるみのチャックなんです」と答えたら訝し気な顔をして行ってしまった。今度またそのマダムに聞かれたら「いや~、この間辻斬りにあっちゃって…」とでも応えようかな。
 

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 入院、手術するにあたって一番心配したのはウチで毎日二回打たなければならないレオのインスリン注射と一日二回のハルの目薬さし。ぼくの入院中はカミさんに頼むほかないのだけれど、予行演習でカミさんがレオに注射しようとしたらしこたま噛みつかれてちょっと恐怖症のようになってしまった。それでもカミさんが何とか頑張って一日一回は注射できるようになったのでありがたかった。

 ぼくの方の手術で医者が一番心配していたのは糖尿があるので手術後の傷の治りに影響するのではないかということ。たまたま同じ病室の隣のベッドにいた人は頸椎の手術をしたのだけれど、やっぱり糖尿があって傷が治りにくく二週間の入院の予定が結局二か月にもなってしまったという。ぼくが入院した専門病院はコロナやインフルエンザの感染防止のため入院中は家族の面会も禁止とあって、長くは居たくないのが本音だ。

 幸いほぼ予定通りの期間で退院でき歩行時の痛みは無くなったけれど、他にも頚椎症の影響などでこれからもリハビリは続けなければならないが、自分の努力でリカバーできるのであればやりがいはある。一つづつ目標をクリアしてまたカメラをもってブラブラ街歩きのできる日を楽しみにしている。
 

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 *入院中は1400キロカロリーの糖尿病食でした。今まで入院した時もそうでしたが、実に味気ない食事で食欲もわかないことが多かったのですが、今回は比較的食べやすい食事でした。毎食出るものを観察していたら、味がしっかりついているものは量で調節して全体としてカロリーや塩分を調節しているので、どれを食べても味気ないという不満が少し薄らいでいるのかなと感じました。

 おかげさまで、二週間ちょっとの入院で2キロ程度体重が落ちましたが、看護師さんは「娑婆に出ればすぐに戻るわよ」と…。入院中は厳しい血糖値コントロールがあり血糖値が200を超えると自動的にインスリン注射を打たれました。今までインスリン注射を打ったことはないので、ああレオは毎日打っているんだよなぁ、と…。今回はいろいろと考えさせられる入院生活でした。
 


posted by gillman at 10:56| Comment(22) | 新隠居主義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする